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Mental Reservation / SCANNER
失恋船長 ★★★ (2025-04-07 07:38:58)
前作から6年のインターバルもあったが、彼らは勝負の3作目を90年代の半ばに差し掛かリリースにこぎ着ける。アクセル・ユリウス以外のメンバーは刷新、レーベルもMassacre Recordsと90年代に差し掛かり多くのバンドが苦心する姿が重なりますね。
そんな厳しい時代に彼らがとった作風は近未来戦争をSFタッチで描いたコンセプト作。随所にSEなどを挟み物語を構築する。シンガーはWolf Spiderで歌っていたポーランド人のレシェク・シュピギエル。

彼のハイトーンと硬質感のあるシリアスなサウンドは、90年代らしい閉塞感もそこそこに乗っけたことで、メロディアスさ加減が浮き彫りとなる、かつての○○路線とはひと味違った色合いを見せつける事に成功。ドラマーのD.D.ブッコも攻撃性を担保、序盤で始まったスラッシュメタルばりの苛烈なるサウンド構築に貢献、ギターワークも今まで以上にスラッシーで切れ味が増した印象を受ける。

そんな中でバラード④なども放り込み①②③と異なるタイプの楽曲を揃えた事で新生スキャナーを印象づけたが、④のジャーマンパワーメタル系パワーバラードは得意ではないので、実は流れを堰き止めている。
今作、商業誌からはイマイチ評価を得られなかったと聞く、残念だが、便乗されたのだろう。個人的に雑誌にマル乗りする輩を素人童貞と呼び、永遠のチェリーボーイと揶揄する。だってそうでしょう、何十年音楽を聴いても音を聴いているのではなく、活字を読んでいるのだから、そりゃチェリーボーイでしょう。好きな音楽もワンパターンになるからね。

⑤ではパワフルなコーラスワークも生かし好戦的な彼ららしいスタイルを見せつける。吹き荒れるグランジ/オルタナムーブメントの中、意地の一撃を喰らわした。コンセプトアルバムだがややこやしくない。そもそも英語圏でもない日本語しか聞き取れない我々には、どうでも良いことだろう。忙しいギターワーク、そして正確に後方支援するパワフルなリズムセクションの強み、色々な要素を織り交ぜながらも破綻しないアイデア、リードギターとしては面目躍如だろう。今作のMVPは新シンガーのレシェク・シュピギエルにつきるだろう。彼のハイトーンは重く刻まれるリフの合間をクリアーに突き抜けてくれた。
柔軟さも今作の幅を広げてくれただろう。

90年代に埋もれたバンドや作品は沢山ある。もはやグランジ/オルタナムーブメントを取り込んだ音楽を聴かされ耐性も出来ているだろう、いまこそ見直して欲しい一枚だ。30年前の雑誌のレビュー丸呑みして生きていける?

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